吉野家が57億円の赤字に?倒産してしまうのか?(2021/2期第二四半期決算解説)

2020年10月7日、吉野家HDの第二四半期決算が公開されました。

吉野家HDは、7月の第一四半期決算発表時に、今期の計画として、最大150店舗を閉店すると公表していました。

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飲食店にとっては、今回の新型コロナウイルスによる売上減少は大打撃であり、他の会社でも大量閉店のニュースは見受けられていました。

では、今期決算はどうだったのでしょうか?

また、吉野家HDは倒産してしまうのでしょうか?

今回は、決算解説と、今後の展望について解説したいと思います。

目次

2021年2月期第二四半期決算について

吉野家HDの2021年2月期第二四半期決算について見ていきましょう。

※参考:吉野家HD公式ホームページの決算短信

https://www.yoshinoya-holdings.com/ir/library/account.html

2021/2期2Q損益計算書(単位は百万円)

  2020/2 2Q 2021/2 2Q
売上高 107,066 81,988
営業利益 2,936 -5,970
経常利益 3,023 -5,004
当期純利益 1,879 -5,708

売上高は前年比マイナス23.4%

飲食業界に共通して言えることですが、売上高は大幅に減少しています。

前年と比べても250億もマイナスであり、減少率はなんと23.4%です。

主な原因は新型コロナウイルスによる店舗休業、時短営業による売上の減少のようです。

吉野家以外の店舗が足を引っ張っている

吉野家HDでは、大きく4種類の営業セグメントがあります。

看板店舗の吉野家、うどん店のはなまるうどん、居酒屋の京樽、その他海外店舗です。

それぞれセグメント別に売上の減少率を見ると面白いことがわかります。

吉野家HDセグメント別の売上高減少率

①吉野家→5.2%の減収

②はなまる→40.1%の減収

③京樽→40.2%の減収

④海外→16.6%の減収

これを見るとわかる通り、吉野家自体の売上はそこまで落ちていません。

というのも、吉野家はテイクアウトも得意としている関係上、新型コロナウイルスに対応できているのです。

店内飲食の方が客単価は高くなる傾向にありますが、来店客数等に大きな影響はなかったようです。


その他の店舗では、テイクアウト販売の対応が遅くなったことが影響しているようです。

うどん店や居酒屋では、テイクアウト商品を出すのが難しかった関係上、店舗休業や時短営業での対応となっており、売上減少の影響となりました。

8月以降はテイクアウト商品を拡充しており、売上が回復傾向にあるとの事です。

吉野家HDの財務状況について

続いて、財務状況の方を見ていきましょう。

吉野家HD2021年2月期第二四半期財務状況(単位は百万円)

  2020/2 2021/2 2Q
総資産 126,167 134,072
純資産 48,385 41,853
自己資本比率(%) 37.9 30.8

総資産は79億円増加

総資産は、前期決算日と比較して79億円のプラスになっています。

プラスの要因は、金融機関からの資金調達による現預金の増加です。

借入によって、現預金は119億円程増加しました。

一方で、閉店による固定資産減少、アークミールの連結除外によって有形固定資産は51億円程度減少しています。

負債額の増加により自己資本比率は低下

総資産は大幅なプラスとなりましたが、それに伴い負債額も大きく増加しています。

金融機関からの借入による増加分が約209億円、アークミールの連結除外による負債の減少と差し引きすると、144億円の増加となりました。

純資産単体で見ると、約65億円の減少で、自己資本比率は7.1ポイント減少し30.8%となりました。

2021年2月期の業績予想と今期の取組みについて

では、今後の吉野家HDの業績について見ていきましょう。

今期は新型コロナウイルスの影響が通年で続くと予想しており、売上高が前年の水準に戻ることはないとの見込みです。

その結果、2021年2月期の営業損失は87億円を見込んでいるとの事です。

売上回復には消極的姿勢

今期の第二四半期までの売上高は、前期に対して、76.6%で推移しています。

今後の売上回復については、少し消極的です。

その理由として、テレワークの増加、店内のソーシャルディスタンスの確保、夜間の外出自粛による来店客の減少はしばらく続くと考えているからです。

このようなコロナウイルスの影響による来店客数の減少は、2022年2月期まで続くと考えており、従来通りの売上水準に回復するのは2023年2月期になってからと考えているようです。

コストの削減に力を入れている

売上回復が見込めない中で、力を入れているのは、コスト面の削減です。


コスト削減策としては、

①家賃交渉

②構造改革による人件費削減

③最大150店舗の閉店

④仕入の見直し

を考えているようです。

このようなコスト削減に取り組むことによって、従来の90%の売上で利益が出るように損益分岐点の引き下げに努めるとの事です。

倒産の危機はある?

では、一番気になる点である「吉野家HDは倒産するのか?」という点に切り込んでいきたいと思います。

結論から言うと、しばらくは大丈夫と言う状況です。

その理由としては、しばらくはキャッシュが足りると言う点です。

コロナウイルスの関係で金融機関からの資金調達を潤沢に行いました。その結果、2020年8月31日時点の現預金残高は、約345億円です。

300億円程度の現預金があるので、借入の返済等も発生しますが、今期決算が赤字であっても問題はないでしょう。

今期第二四半期までの営業活動によるキャッシュフローは、約43億円のマイナスとなりました。

2020年9月〜2021年2月までの営業活動によるキャッシュフローが同程度のマイナスでも資金余力は十分にあると言うのが現状です。

しばらくは食いつないでいけますが、現状設備投資や新規出店を抑えている状況なので、業績がグンと伸びると言うことは考えにくいです。

その分、不採算店舗を閉店したり、コストの見直しを計れるので財務内容的にはスリムになっていくと思われます。

新型コロナウイルスの影響で今後の飲食店の形態を見直さなければいけない可能性はあるので、京樽やはなまるの退店が進む可能性は十分にあり得るでしょう。


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