2020年11月12日、外食チェーン最大手のすかいらーくHDが四半期決算を発表しました。
決算内容もそうですが、今後系列店舗で200店ほど閉店を計画しているとの発表にも驚きの声が集まっています。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020111201172&g=eco
今期決算内容や今後の新型コロナウイルスの状況も踏まえてこのような決断をしたようですが、すかいらーくが今後経営的に大丈夫なのか気になりますよね。
というわけで今回は、すかいらーくの決算を解説しながら、今後の展望について解説していきたいと思います。
直近決算について(2020年12月期第3四半期)
では、2020年12月期の第三四半期決算内容について解説していきます。
詳しい資料はすかいらーくのホームページにある決算短信資料を参照していただければ幸いです。
https://ir.skylark.co.jp/library/tanshin.html
売上高は2,135億円(前年同期比△717億円)
売上高は2,135億円で、前年と比べると大きくマイナスとなっています。
月ごとの比較は次のようになっています。
7月-26.4%
8月-26.8%
9月-21.7%
売上減少の原因としては、コロナウイルスの影響によってリモートワークが主流となっている中で、都心部、観光地での外出自粛による来店客の減少が大きいとされています。
その一方でデリバリーやテイクアウトの売上高は成長している状況です。
四半期利益は146億円の赤字に
売上の減少に対する固定費圧迫が激しく、四半期赤字を計上してしまいました。
赤字額は約146億円となり前年同月比マイナス246億円となっています。
原価率に大きな変化はありませんでした。
その他固定費に関しては、店舗出店、改装の抑制、営業時間変更などを行ってきましたが、売上の減少分を賄える数字ではなかったためこのような結果となりました。
短期借入金の大幅上昇、長期借入金は返済傾向
資金調達面では短期借入金の調達をし、長期借入金は返済傾向としていたようです。
2019年12月期貸借対照表と比較しても、短期借入金は1,136億円増加しています。
反対に長期借入金は2019年12月期と比較して、908億円減少しています。
負債総額で見ると、2019年12月期と比較して99億円程の増加となりました。
すかいらーくHDは2020年3月にメガバンク3社と400億円のコミットメントライン契約を締結、6月には農林中金と三井住友信託銀行を追加招待しコミットメントライン極度額を1,000億に増額しています。
今後の資金繰りを考え借り入れできる体制は整えているようですね。
現在のコミットメントライン利用状況は110億円ということでまだまだ余力は残しています。
新規出店や店舗改装などの設備投資は抑制
貸借対照表の資産状況を見てみると、2019年12月期と比べて有形固定資産が減少していることがわかります。
減少額は約158億円です。
とはいえ、当期減価償却費が382億円と考えると、固定資産の減少分は減価償却費の減少分の一部に過ぎないということですね。
つまり、設備の資産額は減少しましたが、閉店や資産売却による減少ではなく、資産償却による減少ということです。
実際、今期の新規出店数はグループ全体で45店舗となっています。
全く設備投資を行っていないというわけではなく、あくまで抑制しているという状況ですね。
ただし、新型コロナウイルスが激化した5月以降の出店、リモデル計画は中止しており、コロナが収束するまでは目処は立っていないでしょう。
今後は閉店計画もあるようですし有形固定資産は減少する一方ですね。
手元流動資産はキープ
現預金、売掛金等の流動資産額は2019年12月期と比べてもほとんど差がありません。
今期の方が7億円程増加していますが、借入金を増やしているのでその分の資金が滞留している状況でしょう。
流動資産額合計は約374億円と資金面での不安は当面大丈夫そうです。
借入枠も十分確保されていますし、問題は無いように伺えます。
自己資本比率は29.3%→26.0%に
資産額の微減、負債額の微増に伴い、自己資本比率は前期比マイナス3.3ポイントの26.0%となりました。
自己資本比率に関しては明確に安全とされる数値はありませんが、コロナ収束後は回復が見込めると思われるので現状のマイナスは仕方ないと割り切るしかありません。
飲食業なので自己資本比率はそこまで高くはならないですしまあ妥当な数字なのかなとも思います。
すかいらーくは設備投資もコンスタントに行っていたのでそこまで自己資本比率が高くはありませんでしたしこんなもんでしょう。
今後の方針について
設備投資は行わず、不採算店舗の閉店を計画
業績改善に向け、大きく動いたのは閉店計画です。
不採算店舗およそ200店舗を来年末までに閉店させる計画のようです。
しかし、同時並行で採算性の見込める店舗の出店も続ける予定で、トータルで120店舗の削減となる見込みです。
多くの企業が新規出店を控えている中、今後のプラスとなる材料ですね。
また、閉店に伴う人員削減は行わずに配置転換等で対応していく方針とのことです。
すかいらーく側も人材の質を重要視しているため、退職希望等は募らない方針ではあるのでしょう。
営業時間等の見直し(実施済)
すかいらーくではコロナウイルスの影響や今後のライフスタイルの変化に対応するため、営業時間の見直しを図りました。
2020年7月1日から深夜営業を廃止し、全店舗原則23時30分閉店としました。
これにより昼間の時間帯の需要拡大やテイクアウト、宅配の体制を整えています。
また、今年はコロナの影響もあり年末年始の営業時間を大幅短縮するという予定もあるようです。
人件費等のコスト削減を図り財務体質の改善を見込んでいるようですね。
株主優待制度の見直し(12月分より実施)
すかいらーくといえば、株主優待がかなりお得な銘柄としても有名で多くの投資家が保有していました。
6月、12月の年2回株主優待がもらえていたのですが、その優待内容を変更したのです。
具体的には、もらえる優待券の金額を減少させたというもので、多くの投資家たちが嘆き悲しみました。
今期決算内容を見ても、投資家に還元できるのものはあまり無いですし改悪となっても仕方のないことですね。
デリバリー、テイクアウトの強化
どこの外食チェーンも行なってはいますが、デリバリー、テイクアウトの強化に取り組んでいます。
ガストなどではデリバリーやテイクアウト対応は以前からありましたが、今後も利用店舗を拡充したり、Uber Eatsなどの宅配サービスとの提携を進めていく方針です。
コロナウイルス対応のため必須の施策であるといえますね。
ECサイトでの販売強化
すかいらーくHDでは、コロナウイルスの影響による店舗売上減少に備えるべく、ECサイトでの販売を強化していく方針のようです。
具体的には、バーミヤンでの冷凍餃子をオンライン上で販売しEC事業の売り上げも伸ばしていく取り組みをしています。
すかいらーく系列の商品をネットで注文し自宅で食べられるようになるのは単純に嬉しいですね。
倒産の危機はあるのか?
今回のニュースを見て誰もが気になっているのであろうすかいらーくの倒産の危機について話します。
と言っても、すかいらーくの財務状況を見る限り、倒産の危機はあまり見受けられないように感じます。
手元資金もありますし、借入の目処も立っています。
今後に向け経費削減を続けており、財務内容もスリムになることが期待されます。
よっぽどの大恐慌が来たら話は別ですが、今すぐにピンチが訪れているわけではないという感じですね、
外食チェーンにとってコロナウイルス禍での赤字経営は半ば仕方のないことだとは思います。
大事なのは今後どうするかという方針ですのであまり問題はないといえます。
万が一すかいらーくが倒産するようなことがあったら他の外食チェーンも例外なく危ない状況になっていると思われます。
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