いきなりステーキ等を運営している会社「株式会社ペッパーフードサービス」の2019年12月決算が公開されました。
いきなりステーキといえば、2017年頃からのステーキブームに乗じて、数多くの店舗を展開していきました。
元々は立ち食いスタイルのお店で、原価率は6〜7割と飲食店としては破格の店舗となっています。
そんないきなりステーキですが、ここ数年で大量に出店したり海外へと店舗展開をしたりと事業規模の拡大に意欲的です。
最近では店舗展開に失敗しているケースもあるみたいですが、決算はどうだったのでしょうか、見ていきましょう。
決算概要
株式会社ペッパーフードサービスの決算短信が公開されました。
https://www.pepper-fs.co.jp/_img/ir/session/PFS20200226.pdf
2019年12月期 | 2018年12月期 | |
売上高 | 67,513 | 63,519 |
売上総利益 | 27,710 | 27,234 |
営業利益 | -71 | 3,863 |
経常利益 | -34 | 3,876 |
当期純利益 | -2707 | -121 |
今期は営業赤字という結果になりました。また特別損失の影響もあって27億円程の当期純損失となりました。
営業利益が赤字というのは、売上から、原価と会社運営にかかる経費(人件費、家賃、水道光熱費など)を差し引いて赤字になっているということです。
営業赤字になるということは、お店の経営がそもそも上手くいってないということを表しています。
売上の伸びが悪く、経費がかさんでしまった
ペッパーフードサービスはペッパーランチ、いきなりステーキ、その他レストランの3事業に分かれていますが全事業について営業利益は前期比を下回っています。
また、3事業以外にも本社費用も増加したことにより、経費を賄えず、営業赤字という結果になってしまったということです。
また、直営店舗の割合が増えたことによる原価率悪化、人件費の増加なども要因となっています。
いきなりステーキの業績不振
いきなりステーキだけで見ると今期売上高は5%程上昇しました。
しかし2019年度は店舗数を112店舗増やしていますので、1店鋪当たりの売上高は著しく減少していると言えます。
加えて店鋪管理費や人件費は112店舗分増加していますのでかなり業績不振に陥っています。
前期営業利益は5,311百万円に対して今期は1,924百万円と大幅に減少しました。
このいきなりステーキの業績不振が大きい要因であったと言えるでしょう。
店舗を増やしすぎたせいで1店舗当たりの売上が激減?
ペッパーフードサービスの今回の大幅赤字要因は「店舗を増やしすぎた」という点にあるでしょう。
2017年頃に始まったいきなりステーキブームに乗っかって大量出店を始めましたが、ブームが収束しているのと店舗同士での競合、そして他社の進出もあって1店舗当たりの売上は前年の8割程まで下がりました。
最初は物珍しさからいきなりステーキを食べてみよう!と思った人も「また行こう」という気にはならなかったんですね。
飲食店では「リピーター」を増やすことが売上維持につながりますが、残念ながらいきなりステーキでは新規獲得したお客さんをリピーターにすることはできなかったようです。
その原因というか、いきなりステーキの評価ってあんまり高くないんですよね。
元々ファンだった人からも「味が落ちた」という風に言われたりもしています。
その背景にあるのが、「大量出店による人材難」ということです。
ステーキって切って焼くだけの作業ですが、焼き加減ってすごい重要ですよね。
昔のいきなりステーキであれば、何年も勤めている社員が丁寧に焼いてくれていたおかげで望み通りの焼き加減でステーキが提供されていました。
大量出店するということは、それだけ調理する人が必要です。112店舗も増やしておいて熟練した腕前の人がどれだけいるでしょうか。
育成が追いついていない状態で店を出しても、味が落ちるだけですよね。
このように、大量出店によって自社のブランド力まで落としてしまったのです。
2020年計画の概要
これだけ大赤字だったペッパーフードサービスですが、来期はどうするのでしょうか。
2020年は前年の課題であった「いきなり!ステーキ」の大幅なテコ入れをするようです。
おおよその概要としては
- 不採算店舗の退店
- 人材育成制度の見直し
- 海外事業の拡大
です。順番に見ていきましょう。
不採算店舗の退店
ペッパーフードサービスでは、不採算店舗を退店させ、店舗同士の競合を無くそうという計画があります。
いきなり!ステーキは2020年中に、直営店48店舗、FC加盟店26店舗を退店させる計画のようです。
かなり思い切った計画だなという風に感じますが、退店するのにもお金がかかりますので決死の作戦と言えるでしょう。
いきなり!ステーキ以外の店舗はそこそこ好調なので、現状維持といったところでしょうか。
人材育成制度の見直し
人材育成についても色々とやるそうです。
具体的には
- 0.2秒作戦「目を見ていらっしゃいませ!」の挨拶を徹底する
- 新たな人材評価制度を導入する
- 肉マイスター制度の活用(食材の味を引き出す焼き方)
- SV業務の見直しを図る
- HQSCKの完遂
を目標としています。
HQSCKというのは、教育制度として、社長の考えや理念をまとめたもののようです。社内広報誌の2ページ程の大容量のもので「社長だったらこう行動するだろう、こう考えるだろう」というのをまとめているそうです。
SVというのはスーパーバイザーの略で、店舗管理業務みたいなものです。他の会社では「マネージャー」とか言われてたりするポジションに当たります。
ざっとまとめるととにかく人材の質を上げようと必死になっているというようなものでしょうか。
人材育成は会社成長に必須ですしいきなり!ステーキのブランド力を高める上でも重要なポイントになるでしょう。
海外事業の拡大
ペッパーフードサービスでは海外向けに事業拡大を狙っているようです。
これはいきなり!ステーキの店舗ではなくペッパーランチの店舗を中心に29店舗の出店を考えているそうです。
アジア圏を中心に海外出店を続けていますがとりあえずは好調なようです。
拡大させすぎは良くないでしょうが東南アジアあたりはまだまだ需要が眠っていそうですね。
まとめ:直近は大丈夫そうだけど…
以上、株式会社ペッパーフードサービスの2019年12月期決算について見ていきました。
今回の赤字はあまり良い赤字とは言えません。店舗出しすぎた結果不採算店舗ばかりになってしまい大赤字という結果で2019年の計画自体が失敗に終わってしまったという結論です。
2020年は無駄な店舗を減らして経費圧縮に努めていくようですが、退店にも莫大な費用がかかります。
お金も無限にあるわけではないのでどれだけ耐えられるかというところでしょうか。
今すぐに倒産はないでしょうが、2020年の状況次第では危ないかもな、というような印象です。
あとは株式会社ペッパーフードサービスで印象的なのは、株価の大幅な下落ですね。
2019年11月までは1株1,600円あたりまで推移していたのに2020年3月では600円代まで下落しました。
ここまで株価が減少するケースはなかなか珍しいです。今後の株価上昇も期待できそうにないですね。
なんとか回復の兆しが見えるといいのですが、大規模な転換が求められる1年になりそうですね。
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