新型コロナウイルスによる企業への影響が多く出ている中、このような興味深い記事を見つけました。
https://toyokeizai.net/articles/-/342925
ニトリが2020年2月期の決算を公開し、増収増益決算だったとのことです。
さらに面白いのが、2021年2月期についても増収増益を見込んでいるという「攻めた内容の報告」でした。
ニトリホールディングスの会長である似鳥昭雄氏は「不況こそチャンス。うちは無借金で預金もあるから、攻めていくことができる。」と会見で発表しています。
新型コロナウイルスの影響で小売業界の業績がピンチに陥るなか、ニトリがこのような発表をしたのはかなり面白いです。
では、どのような決算内容で、今後の見通しはどういったものなのでしょうか。
今回は2020年2月期の決算内容についての解説と、今後の業績予想についての解説をしてみました。
2020年2月期の決算内容
まずは、ニトリの決算内容について見ていきましょう。
冒頭でもお話しした通り、今期は増収増益決算となっています。
・連結決算(単位は百万円)
2020年2月期 | 2019年2月期 | 前期増減率 | |
売上高 | 642,273 | 608,131 | 5.6% |
営業利益 | 107,478 | 100,779 | 6.6% |
経常利益 | 109,522 | 103,053 | 6.3% |
当期純利益 | 71,395 | 68,180 | 4.7% |
売上高は前年比プラス5.6%の6,422億円、今期の最終利益は前年比プラス4.7%の713億円となっています。
これは相当儲かっていますね・・・。
驚異的なのは財務内容にもあります。
総資産が6,832億円ほどあるのに対して純資産はおよそ5,608億円です。
自己資本比率は驚異の82.0%です。
私も今までニトリの決算を見たことはなかったのですが、これは驚異的です。
自己資本比率が高いということは、借入に依存していなく、それだけ安全性が高いということです。
では、詳しい中身について解説します。
①新商品の売上が好調
売上が増収であった要因としてあげられるのは、寝具・キッチン用品・家電・ソファ等の売上が好調だったようです。
まずは、CMでもおなじみであった「Nクール」、「Nウォーム」の新商品です。
使い勝手や商品性能の良さからこちらの商品自体の売上が好調であった上に、他の寝飾品の売上増加にもつながったようです。
他にもマットレスの「Nスリープ」やキッチンマットである「PVCキッチンマット」などの売上も好調でした。
洗濯機や冷蔵庫などの家電部門も好評だったようでそういった商品の売上が今期の増収要因であったと言えます。
②人件費、物流コストは上昇したものの、全体的なコスト削減に成功
増益であった要因について解説します。
昨今の情勢から人件費は高騰し、物流コストも上昇していて経費面では向かい風となる要因も多かったようです。
ニトリが行なった施策としてはまずは運送にかかるコストを減らしたことです。
具体的には商品梱包時の梱包サイズを下げたことで運送コストを削減しました。
他には世界的な店舗に対しても、商品原材料を統一し、共通した商品を提供することで原価削減を図ったり、物流センターを増やしたことで配送ドライバーの負担を減らして人件費を抑えたりしていました。
結果としてコスト削減には成功しており、営業利益としては前年比プラスで推移しました。
③EC事業は順調、海外展開はやや下降ぎみ?
その他の要因についてですが、まずは昨今の情勢からしてECの売上は伸長しています。
店舗では網羅しきれないサイズやカラーバリエーションを展開していることで売上増加につながったようです。
また海外事業についてですが、台湾、中国に計4店舗を展開していましたが9店舗を閉店しています。
採算合わない店舗はすぐ閉鎖しているので順調であるとは言えませんが、財務内容が良いためすぐ閉店に至れる点は良いですね。
今後の見通しについて
2020年2月末までの決算が順調であるという点は分かりました。
しかし、新型コロナウイルスの影響もある中で多くの企業は事業見通しを不透明という風に説明しています。
ニトリの事業見通しも不透明であるとした上で、具体的な数字を出してきました。
その内容というのが、売上高は前年比プラス1.7%の6,532億円、当期利益は前年比プラス6%の757億円と公表しました。
かなり攻めた内容となっていますが、この要因はどういったものなのでしょうか。
コロナ不況の中、需要が高まる商品も?
コロナウイルスの流行により消費行動が抑えられるなか、新たな需要も発生しています。
在宅ワークが広まっている中で、自宅で作業できる机や椅子の需要は急増しているのです。
さらに3月に限っては、新生活の需要もあり、収納付きのベッドや家電の売上も好調であり、前年同月比プラス10.9%の売上だったとのことです。
その一方で国内の店舗売上は相対的に見て落ち込むと考えており、上期の国内売上高は1.4%減少と予想しています。
しかし、為替予約による決済レートが円高であることから商品コストは抑えられると考え、粗利益率は上昇すると予想しています。
不況をチャンスに先行投資
ニトリの会長である似鳥昭雄氏は「不況をチャンスに」と言っています。
店舗投資に対して積極的になると言ったことも提言しているのです。
かなり攻めた発言ですが、これにはちゃんとした理由があります。
まずは、不況による不動産価格減少を大きな出店チャンスと考えているのです。
不況が起これば当然、土地の値段は下がる上に建築費も抑えることが可能です。
ニトリの会長は創業者であり、バブル崩壊、リーマンショックを経験してきた人物でもあります。
会長はこれらの不況時にも積極的に投資を行ってきました。
安く建設できる状況をチャンスと考えるあたり経営者としては素晴らしいものでありますね。
そして、店舗の増加だけでなく、物流センターも増やす予定とのことです。
物流センターを増やすメリットは、外部に頼らない分運送コストを抑えられる点です。
もちろん初期費用はかさみますが、後々のコスト減を考えての投資なのです。
物流を整えることは、今後のEC事業の拡大と併せて有効です。
こうした「攻めの経営」を続けていることでここまで規模を拡大させていったというわけですね。
攻めの経営のためには崩れない財政基盤が重要
ここからは何故ニトリがここまで「攻めの姿勢」を貫けるかについて解説します。
単純に考えて、不況時に店舗を増やすことは、取得コストは抑えられますが、それに見合ったリターンが得られるかも不透明です。
もちろん不況になれば家具を買う余裕もなくなるかもしれません。
絶対に成功するとは限らないわけです。
ですがニトリには、安定した財政基盤があります。
2020年2月期決算時点での現金および預金は1,591億円です。
これだけ現預金があれば、出店失敗してもリスクが少ないです。
さらには無借金経営を貫いているので借入金を返済するという負担もありません。
企業は基本的に借入によって設備投資を行いますので失敗した時のリスクは大きいのですが、ニトリのような盤石の財政基盤においては投資を自分のお金で出来るので失敗しても現預金を減らしただけで済むというわけです。
そして、不況時には多くの企業は出店を控えます。
ということは良い場所にあらかじめ出店しておけば、不況が終了した時にその地域を独占することができるのです。
そういったことまで考えての出店です。
「挑戦しなければ、成功することは絶対に無い」というわけですね。
まとめ:やっぱり創業者の力がすごい
ニトリの決算は安定しているというのが感想ですね。
株価も3月中はかなり落ち込みましたが、4月に入ってからは回復しています。
ニトリの会長はアイディアが豊富で、これまでもかなり攻めた経営をしてきていました。
今回もまた「攻める」ようです。個人的な意見としては会長が現役である以上はある程度安心かな、という風に思います。
今期の決算が楽しみな企業の一つと言えますね。
↓他の会社の決算分析もしています。よろしければどうぞ
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