新型コロナウイルスの影響により経済的に大ダメージを受けていますね。
景気回復策が出るといいですが、すぐには出そうにありません。
日経平均株価やNYダウが大幅に暴落しているなか、リーマンショック級の不景気に陥る可能性があります。
界隈では「コロナショック」と称されていますが、実際外出や消費が制限された中で経済を回すことなど不可能です。
リーマンショックの時は世界的な大混乱を招きました。今回もそれが起こると思うとゾッとしますね。
今回はリーマンショックについてまとめてみました。
リーマンショックと今回のコロナショックでは背景が全く違いますが、経済の動きや暴落時の動きなど学べることもありますのでしっかり学んでおきましょう。
リーマンショックとは?
リーマンショックについて超簡単に説明すると、
アメリカの投資銀行リーマンブラザーズが経営破綻したことで、世界的な金融危機が起こったということです。
リーマンブラサーズが破綻したことでリーマンブラザーズで購入した投資信託や社債は全て紙クズとなりました。
リーマン・ブラザーズは投資銀行(現在の証券会社)の中でもトップクラスの規模でしたのでそこが潰れたということはアメリカ経済を大きく揺るがすこととなります。
投資をするのは何も個人だけではありません。
企業だって自分の財産を投資に回したりします。その額は個人に比べて莫大な金額となるでしょう。
では、リーマンブラザーズで多額の投資信託等を保有していた場合どうなるでしょうか。
単純に企業としては投資しようと預けていたお金がなくなってしまったのです。
更にリーマンブラザーズの取引先にとっては「超VIPなお客さんがいなくなってしまった」ということになります。
大きい会社からは、それだけ受注も多く、大口取引先を1件失うだけで企業にとっては大打撃です。
リーマンブラザーズが破綻したことで各所に影響が出て、経済は悪化しました。
それに対してアメリカ政府の救済政策が遅く、取り返しのつかない状況になってしまっていました。
そのような対応の遅さからアメリカ経済に対する不安感は広がっていきました。
そうやって世界的な金融危機になってしまったというわけです。
リーマンショックが起こった背景
では、なぜ世界的に大規模な投資銀行であるリーマンブラザーズが破綻してしまったのでしょうか。
まずはリーマンブラザーズの歴史について遡ってみましょう。
リーマンブラザーズの業績拡大のきっかけ
実は、リーマンブラザーズは1990年代までは投資銀行業界の中では比較的弱い部類でした。
そうした中、1999年にサブプライムローンの証券化をいち早く進めたのです。
これがハイリスク・ハイリターンの商品なのですが、後々大ヒットします。
サブプライムローンの証券化を早く進めたことで、業績が拡大し、投資銀行の中でもトップクラスの事業規模となることができました。
サブプライムローンについて
サブプライムローンとは、信用上問題のある人でもローンが組むことができます、というローンです。
具体的な要件として
- 年収に対する借入が50パーセント以上
- 過去1年間で30日間の延滞が2回以上あった
- 過去5年以内に破産している
というような条件でも大丈夫なローンです。今では全く考えられないです。1回の延滞ですら重くみられますからね。
実際これだけ危ない人でも貸せるローンなので、金利は非常に高いです。
返してもらえる可能性はかなり低いが、金利は高くつく、まさしくハイリスクハイリターンなローンです。
サブプライムローンの証券化
リーマンブラザーズはこのサブプライムローンに目をつけ、証券化したのです。
証券化というのはサブプライムローンを投資の商品として投資家に売るということです。
仕組みを説明します。
まず信用上問題のある人が銀行にローンを借りに行きます。
通常のローンは銀行と借りた人の間だけで取り交わされるものですが、そこに投資銀行が介入します。
投資銀行は、銀行に対してサブプライムローンを買います。売買が成立すると銀行はサブプライムローンの権利がなくなります。
ローンの貸主が変わったということです。こうなると、借りた人は投資銀行が貸主になるので、そっちにお金を払う必要があります。
銀行は預金している人からお金を借りて融資しています。
では、投資銀行はどうやってサブプライムローンを買うのでしょうか。
投資銀行は投資家からお金を借りてこういった投資をするのです。
投資家50人から100万円ずつ借りれば5000万の資金ができます。投資銀行は集めたお金から株を買ったり国債を買ったり運用してリターンを投資家に返します。
投資銀行は投資信託の中にサブプライムローンを組み込んで投資家達に販売していったのです。
サブプライムローンの投資がうまくいく
このサブプライムローンですが、最初はノーリスクハイリターンの商品だったのです。
さっきまでのサブプライムローンの説明を聞いていたらリスクはとても高いように思えます。
しかし、サブプライムローンはそもそも融資商品です。貸す側にリスクがあってはいけません。
そのリスクを無くすのが「担保」です。お金を貸すときに、担保を取るのです。
例えば、車のローンを組むときに、買う車を担保に取ります。
もし、ローンが払えなくなったら銀行は担保に取った車をもらって借金をチャラにします。
銀行はもらった車を売ってお金にします。これである程度のお金は回収できるのです。
例えば200万の車を担保に取って200万のローンを組んで、残り50万の時に払えなくなったとします。銀行は150万プラス利息をゲットしたうえ、車ももらえます。この車を売ったら数十万円にはなりますよね。
こうやってリスクを減らしていたのです。
そして、このサブプライムローンを加速させたのが住宅です。
リーマンブラザーズがサブプライムローンを投資に組み込んだ時から徐々に住宅バブルが起こります。
最初は1000万円の家だったのが5年後には2000万になっているというような状況だったのです。
これは融資する側にとってはとても良いことでした。
1000万の家を買うのに1000万貸したとします。もちろん買った家は担保に取ります。
お金を借りた人が5年後払えなくなります。そうするとその家は銀行のものになります。
5年前は1000万円だった家が今では2000万円になっているので銀行は2000万円で売ります。
するとどうでしょうか。銀行は5年間のローン返済代金と家の売却代金で2000万円を手に入れたことになります。
まともに払い終わったとしても高金利で収入が得られますし、払えなくても担保の家を売るだけで儲かる。
サブプライムローンはほぼノーリスクの商品になっていたのです。
リーマンブラザーズは銀行から大量にサブプライムローンを買っていましたので、とても儲かったというわけです。
サブプライムローンが大流行
サブプライムローンは住宅価格の上昇もあり大流行していました。
ここで冷静に考えて欲しいのは、住宅価格が上がってもどこかで頭打ちするし、住宅バブルが崩壊する可能性もあるのでは?ということです。
5年後に家の値段が倍になったケースを先ほど書きましたが、逆に半分以下になったら?と思いますよね。
当然そういった懸念はありました。特にサブプライムローンはお金を返してもらえない可能性が十分にあります。今はノーリスクでも後々ハイリスクになるのは予想できるはずです。
しかしサブプライムローンは拡大し続けました。
その背景にあるのはローン債権の流動化です。
アメリカではローン債権の流動化が一般的でした。どういうことかというと、銀行が貸したローンを投資銀行に売り、投資銀行はそれを投資家に売るというようにローンの貸主がどんどん流れて分散されていたのです。
銀行はお金を貸して、ローンの貸主になりますが、その権利を他に売ります。
100万のローンを105万で投資銀行に売るというような仕組みです。
銀行は利息がついているとはいえ、他人にお金を貸すのは怖いです。
でも自分たちが貸したローンを他が買ってくれるならノーリスクですよね?
実際銀行は100万のお金を貸しましたが105万で投資銀行に売ったので、5万の収入を得ています。
こうなると銀行はどうなるかというと、もっとお金を貸したくなるわけです。
自分たちが貸したお金を、投資銀行が買い取ってくれるのでどんどん貸して売ろうということになります。
アメリカではこのようにローンが流動化したことにより、ローンが拡大していました。
しかし、サブプライムローンもこの流動化によって爆発的に拡大しました。
もしローンが流動化していなかったら、銀行はサブプライムローンであっても貸したがらないでしょう。いつかは住宅価格が落ちる日が来るのですから。
でも投資銀行が喜んで買ってくれるのです。じゃあどうするか。
サブプライムローンを積極的にやろうとしますよね。
そうした背景もありサブプライムローンは大流行していったのです。
2006年、住宅価格が急落する
ついに恐れていたことが起こります。2006年に入ると、住宅価格が急速に鈍化したのです。
そうすると、サブプライムローンの延滞率がとても増えたのです。
住宅価格の減少とローンの延滞率の関係はあるのか?と思いますよね。あくまで家の値段が下がって損するのは銀行などの貸し手側だけでは?
なぜ延滞率が増えたのか、それはサブプライムローンを利用した不動産投資です。
先ほど銀行が5年後に家を売って儲かった話をしましたがそれは借りる側にとっても同じです。
2000万で家を買って全額ローンを組みます。それが5年後4000万になりました。
ローンを借りた人はその段階で家を売ります。売った後はローンを全額返済しなければいけません。
4000万で家を売って2000万のローンを返済します。5年間で払った利息を差し引いてもお釣りが出ますよね。
そうすると借りる側はたくさん家や不動産を買おうとします。2000万の家を5戸買って5年後倍の値段で売ればさっきの5倍儲かります。
サブプライムローンでそういうことができたのです。銀行は貸したがってましたからね。
もちろん借りる側は購入金額の全額をローンで組みます。
でも家の値段が下がるとどうなるか、もちろん払えなくなりますよね。
極端な例ですが、2000万の家を10戸買ったとします。2億のローンを組みましたが5年後家が半分の値段になってしまいました。そうなると売っても1億にしかなりません。残りの1億はどうやって払うのでしょうか。払えないですよね。ただでさえ信用上に問題があるのですから。
こうして売ろうとしてたものが売れなくなり延滞率が上がったのです。
住宅バブルの崩壊とサブプライムローンの崩壊
住宅バブルの崩壊が始まりましたが、借りる側だけが痛手を負った訳ではありません。
サブプライムローンを積極的に買っていた投資銀行はどんどん損失を出していきました。
銀行はサブプライムローンを売りまくったのであまり痛手はありませんでした。
もちろん新規に貸した分は買い手がつかなくなり損失にはなりますが、もともと売っていたものはリスクを負いません。
投資銀行が危ない、となるとどうなるか。
まず投資家たちは焦って自分の保有している投資信託を解約しますよね。
投資銀行が投資家1000人から100万円を集めたとします。10億集まりましたがこれを運用しています。サブプライムローンが儲かると思っていた投資銀行はサブプライムローンをたくさん買います。例えば4億くらい買ったとして、その4億のローンが崩壊したら投資家は焦って払い戻しを要求します。そうすると投資銀行はお金を返さなきゃいけません。
投資信託は投資結果で価格が変わるので、もちろん100万借りたからといって100万返す訳ではありませんが、借りてる投資家が一斉に解約すると、お金を払い戻さなきゃいけない上に、自分たちが投資で運用する元手がなくなってしまいます。
そうなると投資家は、投資銀行にお金を預けなくなってしまいます。
お金がなければ投資銀行は稼ぐことができません。そのまま破綻してしまいますよね。
こうやってサブプライムローンを運用していった投資銀行はどんどん経営悪化していきました。
リーマンブラザーズが破綻したわけ
サブプライムローンが崩壊したことでリーマンブラザーズは破綻したわけなのですが、リーマンブラザーズだってサブプライムローンだけやっていたわけではありません。
株式で運用もしていましたし、リスクの低い国債や社債でも運用していました。
サブプライムローンが入っていない投資信託を選べば比較的安全ですよね。
サブプライムローン1個が崩れたくらいでも他の商品を買えば良いわけです。ローリスクローリターンな商品を選べば大丈夫なはずです。
しかし、残念ながら、投資家たちは買いませんでした。
その理由が2つあります。
1つ目は、サブプライムローンが入っているがどうかが明白になっていなかったという点です。
サブプライムローンを組み込んだという投資商品もある中で、サブプライムローンが入っていないと買いていない商品もたくさんあったのです。
つまり投資家たちは、サブプライムローンが入っていないであろう金融商品でも、もしかしたら入っているかもしれないという不安感から、購入することができませんでした。
投資銀行が売っている商品全体に不信感が発生したのです。
これにより金融商品のリスクというものが計り知れなくなってしまい、安全だと思われるものにも手が出せない状態となってしまいました。
もう一つは、サブプライムローンの影響で、他の安全な投資商品の運用もうまくいかなかったのです。
住宅が下がったことはサブプライムローンだけでなく、景気全体に連動しています。
他の投資自体もそもそも上手くいっていないし、住宅バブルは崩壊して経済悪化もますます進んでいきましたので安全と言われるものでさえも運用が上手くいかなかったのです。
リーマンブラザーズの崩壊、リーマンショックへと
こうしてサブプライムローンで業績を伸ばしていたリーマンブラザーズは、サブプライムローンによって崩壊していくのです。
2008年6-8月期には39億の赤字となってしまい、株価が大暴落。
最終的には負債総額64兆円というとてつもない額を抱えて倒産していくのです。
リーマンブラザーズという会社の崩壊、サブプライムローンを流動化させたことによる大崩壊はアメリカ経済を悪化させるとともに、アメリカの会社に投資していた他国やアメリカの金融商品を購入していた他国にも連鎖していきました。
こうして世界的な大不況となっていったのです。
結論:金融商品が引き起こした大不況でした。
リーマンショックについて見ていきましたが、よくよく見てみるとリーマンブラザーズだけのせいではないのがわかると思います。
サブプライムローンもそうだし、それを流行させてしまった状況もそうです。
そもそもローンを流動化してしまったことも原因の一つでしょう。
そうやって何か一つでも起きていなかったら、こんな不況にはならなかったと言えます。
結局、ノーリスクなものなんてないのです。だからこそ、深追いするべきではないというのがわかります。
今回のコロナ騒動もそうですね。日本ではオリンピック前ということもあり、観光客で特需が発生していた矢先にこれです。
もし、オリンピックによる特需を見込んで大量に投資していたらどうでしょうか?
今回のコロナウイルスは予想できたものではありませんが、こういうリスクも存在するということをしっかりと覚えておくべきでしょう。
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