新型コロナウイルスの影響で景気が悪化する中、日銀が追加の金融緩和政策を発令しました。
この金融緩和は3月16日と4月27日に行っています。
コロナショックが続いている中で、度々金融緩和政策を行なっているわけなのですが、どれほどの効果があるのでしょうか。
そもそも金融緩和政策とは何なのか、そこから疑問を感じている人も多いと思います。
今回は金融緩和政策について解説しつつ、コロナウイルスによる不景気対策になり得るのかというテーマで解説していきたいと思います。
金融緩和政策とは?
金融政策とは、中央銀行が行う経済政策です。
景気を安定させるために金利を下げたり、日本銀行が自ら国債を買ったり株を買ったりして調節するという政策になっています。
緩和政策には、金利を下げる質的緩和と、日銀の当座預金を増やす量的緩和があります。
緩和政策の目的は?
緩和政策では、経済を回してお金の流れを活発化させたい(景気を良くしたい)という目的があります。
市場の金利が下がると、借入の金利が下がるので、いつもより借りやすくなります。
お金を借りるということは、何か使う目的があって借ります。
家を買うにしても、車を買うにしても、明日からローンの金利が半分になると言われたら皆ローンを組みやすくなります。
このように借入が活発になると、何かを購入しようとするのでお金が動きます。
例えば家を買うだけでも、材料を仕入れて、加工して、建築会社が建てて、と様々な会社が儲かるのです。
こうやって連鎖的にお金が回るようになります。これが金融緩和政策の狙いです。
量的緩和政策って?
では、量的緩和政策とはどのようなものでしょうか。
簡潔に説明すると、民間の銀行にお金を与えて、お金を積極的に動かそうとする政策です。
具体的には、日銀が銀行から国債を購入することが「量的緩和政策」の一つです。
国債は国の借金です。仕組みとしては、100万円の国債を購入したら、数年後に105万円で売れるというものです。
国にお金を貸す代わりに、後で利息付きで返してもらえるということですね。
例えば、A銀行が10億円で国債を買ったとします。10年後に10億5千万円で売れるはずでしたが、途中で日銀がA銀行から国債を買い取ってしまいました。結局売却額は10億1000万円だったとします。
A銀行は10億1000万円を手に入れましたが、本来5000万円得するはずのものを1000万円しか得られませんでした。
このまま10億1000万円持っていても1円も増えないので、銀行はこのお金を使って他の人に貸して利息を得ようとします。
銀行はお金をただ保有するだけでは利益になりません。ですので持っているお金のうちある程度は融資に回したり、投資に利用するようになるのです。
このように、日銀が民間の銀行から国債を買うことで、日銀が持っていたお金を銀行に回すことになります。
逆に日銀が国債を売ってしまえば、民間の銀行はお金を日銀に渡さなければいけないので、自由に使えなくなってしまいます。
こうなると市場にお金が回りにくくなります。インフレの時はこうして対処するというわけです。
日本がこれまで行ってきた金融政策についておさらい
では、日本はこれまでどのような金融政策を行ってきたかについて、確認して見ましょう。
戦争が終わり、高度経済成長期の1960年代から金融政策は行われるようになりました。
最初は公定歩合操作(金利政策)が中心です。
公定歩合操作とは、中央銀行が民間の銀行にお金を貸す時の金利を操作することです。これにより、銀行の預金、貸出金利が変化します。
高度経済成長期から第1次オイルショックにかけて、貨幣の供給率を下げるために、金利政策を転換し、1973年には金利が9%になりました。
そこから、調整のために段階的に金利を引き下げて、1978年には3.5%に戻しました。
その後、1986年に低金利政策を実施し、5回に渡って金利を引き下げました。
低金利政策を戻すために1989年からは、5回にわたって金利を引き上げ、2.5%から6%にまで上昇させました。
その後、1991年7月に公定歩合を5%にまで引き下げて、金利は徐々に下がっていきました。
こうして金利を下げて1999年には金利がほぼ0%になるまで押さえましたが、資金は回らず、デフレが続いてしまいました。
金利が0%に近くなると、これ以上下げることができなくなるので、2001年以降は「量的緩和政策」に切り替えていくことになります。この量的緩和政策は5年間続きます。
2006年3月に量的緩和を一旦解除し、金利目標へとシフトしていきますが、短期金利は低いままとなりました。
2008年のリーマンショック後、他国が協調で利下げをする中で、日本はこれに応じませんでした。
しかし2013年、日銀は突如マネタリーベースを2倍にすると発表しました。量的緩和政策です。
マネタリーベースとは、市中に出回っている通貨量のことで、銀行から国債を買うことで、銀行にお金を供給することになり、出回るお金が増えるということになります。
これを2倍にするということは、世の中に出回るお金を増やそうとしたのです。とどのつまり、景気を良くしようとしたのです。
マネタリーベースを2倍にするということは、とんでもないことです。世の中に出回るお金の量が2倍になるということは、お金がたくさん動くのですから、間違えるとインフレが進みすぎる可能性もあります。
日銀は、物価が2%上昇した段階で、調整するつもりでした。
しかし、景気が回復することはありませんでした。
そうなると他の策を講じるしかありません。金利を下げた。お金を増やした。そのあとはどうするのでしょうか?
正解は、もっと金利を下げたのです。
具体的には、「マイナス金利」と呼ばれる政策です。
マイナス金利政策というのは、日銀の当座預金の預金金利を-0.1%にするというもの。
日銀にある当座預金は、主に民間の金融機関が利用しています。
民間の銀行は、日銀にお金を預けていると、利息を取られるようになってしまったのです。
こうなると、民間の銀行は、お金を預けずに、外に放出するようになります。
これにより、融資や投資などを活発化させようとしたのですね。
結局日銀は、量的緩和政策、質的緩和政策の両方を講じていますが、物価の上昇率は大きくは上昇していません。
下がっているわけではないので、効果がないわけではないです。
しかし、上昇率が緩やかなせいで、金融緩和から戻すことができないのです。
今、金利を上げたり、国債を売却して貨幣の流通量を減らすとどうなるか。
市中のお金の動きが一気に悪くなってしまいます。
このように、緩和政策を戻すタイミングを失ったまま、景気が停滞している状況にあるのが現状です。
金融緩和政策はコロナショックに効果はあるのか?
では、この金融緩和政策に意味はあるのでしょうか?
私の持論としては、コロナショックを根本的に解決する策にはならないと思っています。
コロナショックの状態においては、投資活動よりは、資金繰りがショートしないように企業は無駄なお金は使わないでしょう。
もちろん、コロナの影響で融資は盛んに行われるでしょうが、消費行動や投資にはならないことでしょう。
現在の日本では、観光客ビジネスに頼りすぎていた側面があります。観光客がほぼ0である中、消費が活発になることはまずありえません。
消費が増えないと、売上が下がり、給料も下がり、物価が下落します。
物価が下落すると売上が下がるので以降ループしてしまうのです。
ですが、日銀ができることというのは、金利を下げてお金を借りやすくする、もしくは、市中の通貨供給量を増やすという2種類しかありません。
現状では、この2つの緩和政策を行うしかできませんので、日銀としても八方塞がりな側面もあるのです。
根本的な解決策とは
金融緩和政策では景気回復の根本的解決にはなりにくいです。現状では、金利が高くてお金が借りにくいわけでもありませんし、貨幣供給量も問題ないです。
景気回復のためにはどうすれば良いのか、この点は常に議論されている問題ではあります。
コロナショックによる不況から脱却するためには、いち早くコロナウイルスを収束させる以外に方法はないと思います。
外出やお店の営業が制限されている中で、お金の流れを活発化させることは不可能です。
日本で考えると、外国人観光客の存在は必要不可欠です。
一刻も早くコロナウイルスを収束させるために、国民一人一人が意識して自粛する必要がありますね。
コロナウイルスが収束したとして、自動的に景気が上昇していくわけではありません。
景気を良くしていくためには、一人一人の所得を上げて消費が活発化できるような仕組みを作らなければいけません。
貯蓄も大事ですが、全国民が貯蓄ばかりしていても、経済は衰退する一方です。
貯蓄と消費のバランスを保つためにも、所得水準を上げる必要がありますが、そのために鍵となっていくのは、個人で稼ぐ力なのかなと感じています。
現状の収入プラスαで収入があれば、少し消費に回せると思います。
副業がメジャーになりつつある現代で、たくさん稼いでたくさん使うという行動ができれば、国内の景気に少なからず影響を与えられることでしょう。
ですので、早急に稼ぐことのできる仕組み化を進めていくのが最大の景気対策と言えるでしょう。
そのためには、とにかくコロナを収束させることが必要不可欠です。
コロナ対策が最大の景気対策と言われている所以はこの点が挙げられるのです。
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