新型コロナウイルスの感染拡大により、企業の損失は大きいものとなっています。
実際、ここ数ヶ月の間でも多くの企業が倒産しました。
飲食業と、ホテルなどの宿泊業が多く倒産している中、次いで多いのは「アパレル業界」です。
飲食やホテルが倒産するのはわかりますが、なぜアパレルがここまで倒産するのでしょうか?
今回はその理由を徹底解説していこうと思います。
なぜアパレル業の倒産が多いのか?
アパレル業界が新型コロナウイルスの影響で倒産しやすいのにはいくつか理由があります。
- 業種柄、薄利多売であること
- 増税と暖冬により去年の売上が悪かったこと
- 外出自粛による来店客数の減少
- 外出自粛による服の需要低下
- 人件費、家賃の圧迫
- 大量の在庫を抱えてしまうこと
一つずつ順番に説明していきます。
業種柄、薄利である
アパレル業界はそもそも利益が出にくいビジネスモデルとなっています。
服は作る→デザインする→売るというのが大まかな流れです。
自社で製造から販売まで担えたら良いですが、そうではない企業もあり、そうなると原価がかさんでしまうのです。
ここで、アパレル業界の上場企業の営業利益率について見てみましょう。
- ファーストリテイリング(ユニクロなど)→11%
- しまむら→4.4%
- アダストリア(グローバルワーク、ニコアンドなど)→5.79%
- ユナイテッドアローズ→5.6%
グループ会社単位での営業利益率ですので、正確な数字ではないのですが低い水準であることは伺えます。
ユニクロ、GUなどを運営しているファーストリテイリングが高めですが、当社は自社で製造から販売まで行っており、余計な費用がかからないため比較的高水準を維持できます。
それでも10%程度ですので、業界を通じて薄利であることはわかるでしょう。
前提:増税、暖冬で去年の売上悪化
実はアパレル業界はコロナウイルスになる前から、厳しい状況は続いていました。
2019年10月には消費税が10%に上がりました。
これにより、消費者の購買意欲が減退してしまっているのも向かい風になっています。
さらに厳しい状況となったのが、気候という外部環境です。
2019年の冬は比較的暖かい日が多かったですね。
暖冬であると、冬物のコートなどの需要が減少します。
寒くもないのにわざわざ大きい出費をしてまで買う必要はないですからね。
流行も早いので、あまり着ないものを買うメリットはありません。
その結果、アパレル業界としては、2019年の秋以降売上が減少してしまう要因となってしまった。
外出自粛による来店客数減少
アパレル業界では、コロナウイルスの影響を大いに受けています。
まず、外出ができなくなったことにより、店舗に来店するお客さんの数が大幅に減ってしまったのです。
今ではネット販売も多くなっていますが、服を選ぶ時は実際に試着したい人も多いですよね?
アパレル業界において店舗売上というのは、非常に重要な側面を持っています。
①実際に試着できる
②店員さんからアドバイスを受けられる
③店員側はお客さんに対してセールスができる
ネットが主流になった今でも、店舗の重要性は無くなりません。
そのような状況で、店舗に来店ができないとなるのは、痛手となります。
家賃、人件費などを考えても大きい損失となっていることでしょう。
外出自粛による服の需要が減少している
店舗に買いに行けなくてもネット販売があるからまだ大丈夫じゃないか?
と思うでしょうが実は違います。
コロナウイルスの影響で外出自粛が続くと、服を買う必要がなくなるのです。
外に出るから服が必要なわけで、どこにも出掛けられないのであればわざわざ買わなくてもいいですよね?
服は季節ごとに需要が発生します。
今年の春物はほとんど需要がありませんでした。
夏まで新型コロナウイルスの流行がおさまらなかったら夏物も当然売れません。
1年の半分以上の期間、損失を抱えるというのはかなりまずい状況ですね。
人件費、家賃等の固定費が圧迫している
売上が減少している以上、痛手となるのは「固定費」です。
アパレルブランドでは、全国に多数の店舗を展開していることが多いでしょう。
人件費、家賃やテナント料が何倍にも重たくのしかかることになります。
特にショッピングモールなどに展開しているお店も多いですから、集客が見込めないのとテナント料が重くのしかかっています。
店舗を縮小して人をリストラしたらいいのでは?と思うかもしれませんがそんな簡単な話ではありません。
店舗を閉店するのにも、お金がかかります。
賃貸契約期限前であれば違約金がかかる可能性もあるでしょうし、自分で所有する店舗であれば売却時に損失を抱えるリスクもあります。
このように、店舗を閉めるのにもお金が必要なので、資金に余裕のない企業は手詰まりになってしまうのです。
在庫を抱えるリスク
更に問題となるのが、在庫という点です。
売れなかった商品は当然、在庫として残るというわけです。
服は食品などとは違って腐るということはありません。
しかし、季節が変わると残っている服に価値はなくなります。
来年になると流行が変わってしまうので今年のうちに売り切ってしまわないといけません。
よく、季節が変わる直前に在庫処分のためにセールを行っているのはこういう理由からです。
コロナ下では、多くの商品が売れ残り不良在庫となってしまうでしょう。
仕入れにも当然原価がかかっています。売れなかったら当然赤字になるので死活問題です。
特にアパレル業界では、原価は大きいです。
在庫は多めに抱えていることが多いので売れなかったら大きな損失になってしまいます。
上場企業ですら倒産するケースも…
今回の新型コロナウイルスによる倒産は大企業でも起こり得ることです。
実際、上場企業のアパレル会社が破綻するケースも出てしまいました。
レナウンが民事再生手続きに
紳士服ブランド「ダーバン」や「アクアスキューダム」を展開している大手会社のレナウンが、新型コロナウイルスの影響で経営に行き詰まり民事再生法の適用を申請しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59213360W0A510C2EA5000/
2019年12月期では、67億円の最終赤字となるなど、元々業績は芳しくなく経営は傾きかけていたところに今回のコロナによる影響が出てしまいました。
負債総額は130億円ほどで、今後は再建を目指すとのことです。
また、今回の民事再生手続きの申請を受け、東京証券取引所はレナウンを上場廃止にするということです。
結論:財務基盤が盤石でない企業は大ピンチです
新型コロナウイルスの影響で倒産する企業の多くは、
- 元々業績が悪く、財務状況に懸念がある
というリスクを抱えています。
今後も流行が治らなければ経済活動の回復は見込めません。
今後、倒産しないためには、「財務状態が盤石であること」が要求されてくるでしょう。
逆に、現金・預金に余力のない企業は間違いなくピンチに陥るでしょう。
こういった業界に投資されている方は、財務状況に注視しておくことを心がけると良いですね。
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