2020年10月27日、ANAホールディングスから第二四半期の決算報告と今期の見通しについての発表がありました。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6374854
今期見通しでは最大5,100億円の赤字を予想しており、赤字額の多さから話題となっております。
新型コロナウイルスの影響があった中で、大幅に売上減少となっており、赤字は避けられない状況でしたが、ここまでの損失となっているのは見逃せないニュースです。
ここまで大々的なニュースになると、倒産の危機はあるのか?とか今後大丈夫なの?という風に思ってしまいますよね。
というわけで今回はANAホールディングスの2021年3月期第二四半期決算内容についての解説と、今後の見通しについて解説したいと思います。
売上高、利益
まずは実際の決算を見ていきましょう。
ANAのホームページに決算資料が公開されています。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9202/tdnet/1892864/00.pdf
2021年3月期第二四半期損益計算書(百万円単位)
2020/3 2Q | 2021/3 2Q | |
売上高 | 291,834 | 1,055,981 |
営業利益 | -280,950 | 78,880 |
経常利益 | -268,671 | 81,515 |
四半期純利益 | -188,477 | 56,787 |
コロナウイルスの影響が凄まじいものになっているのがわかりますね。
売上高は前年同月比マイナス7,641億円です。減少率で表すと72.4%減です。
売上のマイナスが大きく影響し、大幅な営業赤字を計上することとなりました。
四半期純利益は、マイナス1,884億円となっています。
セグメント別の収益について
ANAでは事業のセグメントが5つに分類されています。
・航空事業
・航空関連事業
・旅行事業
・商社事業
・その他
このそれぞれのセグメント別で収益構造を分解してみましょう。
2021/3 2Qセグメント別売上高
航空事業→2,387億円(前年比△72.4%)
航空関連事業→1,198億円(前年比△19.6%)
旅行事業→138億円(前年比△83.2%)
商社事業→382億円(前年比△49.6%)
その他→185億円(前年比△11.6%)
減少率が大きいのは、航空事業と旅行事業です。
コロナウイルスで最も影響を受けた2事業の売上高が大幅に減少してしまいました。
特に、航空事業は前年同期比△6,933億円となっており、ANAの売上減少の大部分を占めています。
続いて、セグメント別の営業利益(営業損失)について見ていきましょう。
営業利益(△は営業損失)
旅行事業→△2,777億円(前年同期比△3,512億円)
航空関連事業→87億円(前年同期比+87億円)
旅行事業→△40億円(前年同期比△53億円)
商社事業→△28億円(前年同期比△47億円)
その他→8億円(前年同期比△7億円)
特筆すべきは、航空事業の大幅赤字と航空関連事業の増益です。
航空事業は売上高の減少と同じく利益も大幅減少、航空関連事業は売上高のマイナスとは裏腹に増益となりました。
セグメント別収益の要因
セグメント別の売上高、利益について、もう少し詳しく見ていきましょう。
航空事業では、新型コロナウイルスの感染拡大による、旅客需要の減少が大きな要因です。
旅客収入については、国際線がマイナス94.2%、国内線がマイナス78.6%、LCCがマイナス81.7%となりました。
貨物収入もマイナスにはなっているものの、旅客収入よりは大幅なマイナスではありません。
これに対し役員報酬や給与カットによる人件費削減を行いましたが、多額の損失を計上してしまいました。
航空関連事業では、新型コロナウイルスの影響により機内食の受注、手荷物受付、搭乗受付等の委託業務が減少したことにより売上減となりましたが、人件費の削減によって増益となりました。
旅行事業については、新型コロナウイルスの影響によりツアーの中止が相次ぎ大幅な売上減となりました。
7月以降はGo To トラベルキャンペーンの開始に伴い徐々に売上が回復傾向にあります。
商社事業は、空港内のショップ「ANA FESTA」などの売上減少が大きく影響しています。
そのため営業損失も計上しており、今後の回復も見込めない状況です。
その他部門については、空港施設の閉鎖などによる建設設備事業の減収が影響し、減益となっています。
財務状況について
2021年3月期第二四半期貸借対照表(百万円単位)
2020/3 | 2021/3 2Q | |
総資産 | 2,560,153 | 2,744,604 |
純資産 | 1,068,870 | 890,205 |
自己資本比率 | 41.40% | 32.30% |
資産の増加要因は、借入による資金調達です。
そのため、負債総額が前期末に比べて3,631億円増加しています。
純資産は最終損益が赤字になった分、利益余剰金が減少しています。
総資産が増え、純資産が減少した結果自己資本比率は減少となり、32,3%となりました。
今期の決算見込み
ANA側から、今期の決算着地見込みが公表されています。
今期は新型コロナウイルスという予測がつかない要因がありますが、現時点での算定ということです。
今期売上高→7,400億円
今期利益→△5,100億円
となる見通しのようです。
今後はどうなる?倒産の危機は?
ANAの決算について解説しましたが、今後はどうなるのでしょうか?
事業継続という面で見れば、しばらくは問題ありませんが、今期で5,100億円の赤字となった場合はかなり痛手になります。
もし来年以降もコロナウイルスの影響が続くようであれば、2期連続で同額の赤字となってしまいます。
そうなった場合に2期で1兆円の赤字となるので、債務超過の危険性も出てくるのです。
債務超過になったからといって、お金が尽きない限りは倒産しません。
実際、大手不動産のレオパレスは6月時点で100億円の債務超過ですが、直近で潰れる心配はあまりないのです。
しかし、債務超過の状態が続いているといつかは資金が底を尽きてしまいます。
そうならないためにも、債務超過にならないよう赤字額を減少させるor黒字にさせるという努力が必要になってきます。
ANAも人件費等の削減策は積極的に行っているようですが、今期については如何にして赤字幅を圧縮するか?というのがカギになってくるでしょう。
現状では、新卒採用の凍結、既存社員の別会社出向などを行なっていますね。
ANAがトヨタに社員出向要請をしたというニュースはかなり驚きでした。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1ec62c06846383db555273e06703acc3257dcff7
とはいえ受け入れる側も困惑すると思います。
そもそも昨今の情勢で人手が必要だという会社は少ないはずですからね。
しかしANAにとっては人件費削減は必須なのでできることは何でもやるべきでしょうね。
社員の立場からすると、給料やボーナスをカットされたり、出向を命じられたりととても不安に感じるでしょうが会社存続のためにはやむを得ない選択です。
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